相続登記の手間が激減?戸籍の「広域交付」活用ガイドと意外な落とし穴

広域交付の活用と注意事項

「実家の不動産の名義変更(相続登記)、そろそろやらないとなぁ…」 そう思って手続きを調べ始めたものの、最初のステップである「戸籍謄本集め」で心が折れそうになっていませんか?

「本籍地が遠方にあって、平日に休みが取れない」 「親が転勤族で何度も転籍していて、あちこちの役所に連絡するのが面倒」

そんな皆様にとって、2024年3月から始まった戸籍の「広域交付(こういきこうふ)」制度は、まさに待ち望んでいたニュースだったかもしれません。 「最寄りの役所で全部取れるようになった!」と話題のこの制度。うまく使えば、手続きの手間を劇的に減らすことができます。

しかし、現場で実務にあたる私たち司法書士から見ると、「この制度を使えば全て解決!」とはいかない現実もあります。 今回は、相続登記をスムーズに進めるための「広域交付の賢い使い方」と、意外と知られていない「落とし穴」、そして当事務所ならではのサポート活用法について解説します。

目次

「戸籍の広域交付」とは?何が便利になったの?

これまでは、戸籍謄本(全部事項証明書)などを取るためには、原則として「本籍地がある市区町村の役所」に請求しなければなりませんでした。 例えば、本籍地が北海道で、現在のお住まいが東京の場合、わざわざ北海道の役所まで行くか、郵便局で「定額小為替(ていがくこがわせ)」という証書を買って、郵送で請求する必要があったのです。

これが2024年3月1日からは、「最寄りの市区町村の役所」(本籍地以外の役所)でも請求できるようになりました。これを「広域交付」と呼びます。

郵送請求や遠出が不要に!

最大のメリットは、「今住んでいる街の市役所や区役所の窓口」で手続きが完結することです。 わざわざ遠方の実家近くまで行く必要も、面倒な郵送手続きで何週間も待つ必要もありません。お昼休みや仕事帰りに(役所が開いていれば)、近くの窓口で戸籍を集めることができるようになったのです。

相続登記で使いたい!広域交付のメリット

相続登記では、亡くなった方の「生まれてから亡くなるまでの全ての戸籍」を集める必要があります。
故人が一生のうちに結婚や引っ越しで本籍地を何度も変えている場合、これまでは何カ所もの役所とやり取りをする必要がありました。

1カ所でまとめて揃う

広域交付を使えば、A市、B町、C村…と点在している本籍地の戸籍を、1カ所の窓口でまとめて請求できます。 もちろん、相続に必要な「除籍謄本(じょせきとうほん)」や「改製原戸籍(かいせいはらこせき)」といった、古い種類の戸籍も対象です。

手間とコストの節約

あちこちの役所に電話して申請書を書く手間が省けるだけでなく、郵送請求にかかる往復送料や小為替の手数料も不要になります。これは時間的にも金銭的にも大きなメリットです。

【重要】ここが落とし穴!「広域交付」でできないこと

「それはすごい!じゃあ明日すぐ行ってこよう」と思った方、少しお待ちください。 実はこの制度、「誰でも」「どんな時でも」使えるわけではありません。 特に相続手続きにおいては、以下の3つの「できないこと」に注意が必要です。

1. 兄弟姉妹や叔父叔母の戸籍は取れない

広域交付で請求できるのは、「本人、配偶者、父母・祖父母(直系尊属)、子・孫(直系卑属)」の戸籍のみです。 つまり、窓口で請求する方の「兄弟姉妹」や「甥・姪」、「叔父・叔母」などの戸籍は、広域交付では取れません。

もし兄弟姉妹の戸籍が必要な場合は、その部分だけ従来通り「本籍地の役所」へ請求する必要があります。

2. 代理人請求ができない(司法書士も不可)

これが一番のハードルかもしれません。広域交付を利用するには、請求者本人が直接窓口に赴く必要があります。

「忙しいから代わりに妻に行ってもらう」といった委任状を使った代理請求はできませんし、私たち司法書士が職権で代わりに広域交付を利用することもできません。

必ず、請求できる本人が、顔写真付きの身分証明書(マイナンバーカードや免許証)を持って窓口に行く必要があります。

3. 即日発行されないケースも多発

制度開始直後から、全国的にシステムへのアクセスが集中したり、古い戸籍の内容確認に時間がかかったりして、「その場ですぐに発行してもらえない」ケースが増えています。 「後日また来てください」と言われることもあるため、急いでいる場合は注意が必要です。

【当事務所のサポート】「どの戸籍が必要?」迷わず役所へ行けるリストを作成します

広域交付は「本人が行かなければならない」制度です。しかし、 「窓口で何をどう伝えればいいか分からない」 「そもそも、亡くなった父の『生まれてから死ぬまで』って、具体的に何通くらいあるの?」 といった不安をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

そこで当事務所では、お客様がスムーズに広域交付を利用できるよう、以下のサポートを行っています。

窓口にそのまま出せる「必要戸籍リスト」をお渡し

司法書士は広域交付の代理はできませんが、「今回の相続には、誰の・どの期間の戸籍が必要か」の交通整理は私たちの得意分野です。

事前にヒアリングを行い、「〇〇さんの出生から死亡までの戸籍一式」「××さんの現在の戸籍」など、具体的に必要な情報をまとめたリストを作成してお渡しします。 お客様は、役所の窓口でそのリストを担当者に見せるだけ。「除籍謄本が…」といった専門用語で説明する必要はありません。

収集後の「読み解き」と「登記申請」はお任せください

戸籍集めは、実は集めた後が大変です。 明治や大正時代の古い戸籍は、達筆な手書き文字(旧字体)で書かれており、解読には専門的なスキルが必要です。もし読み間違いをして一人でも相続人が抜けていれば、法務局での登記申請は通りません。

「役所に行く(広域交付)」のはお客様ご自身でお願いすることになりますが、その後の「戸籍の内容精査(相続人の確定)」と「法務局への登記申請」は、すべて当事務所が引き受けます。 これなら、お客様の負担を最小限に抑えつつ、確実に名義変更を完了させることができます。

まとめ:広域交付を賢く使って、無理な部分はプロに相談を

戸籍の広域交付は、ご自身で相続手続きを進めたい方にとって非常に強力なツールです。 しかし、兄弟姉妹の戸籍が必要なケースや、古い文字の読み解きなど、どうしても専門知識が必要な場面が出てきます。

ご自身の状況に合わせて、ベストな方法を選んでください。 「うちは自分たちで全部できそう?それとも頼んだ方がいい?」と迷われたら、まずは当事務所の無料相談をご活用ください。
最短で手続きを終えられるよう、最適なプランをご提案いたします。

ご不明な点はお気軽にお問い合わせください。

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